冬野梅子「まじめな会社員」を読みました。
キラキラした世界に憧れながらも会社員として働くしか道はなく、彼氏いないどころか友達からもたいして好かれてない、そんなあみ子が自分と重なって胸にグサグサ刺さります。
きっと誰もが「これって私のことじゃん…!」と思うのではないでしょうか?(除くキラキラ女子)
さて、さっそくあらすじネタバレ有りの感想といきますか!
「まじめな会社員」登場人物
あみ子(主人公)・・・地方出身、メールサポート業務を淡々とこなす契約社員
小山綾(綾ちゃん)・・・お洒落な雰囲気を持つあみ子の憧れの女の子
想太郎・・・あみ子の喫茶店友達でその喫茶店でバイトする青年。実は数年前にあみ子をフってる
今村直之(今村さん)・・・あみ子が読んでる書評のライターで、のちにあみ子が恋心を抱く。実は綾ちゃんの彼氏。職業は書店のアルバイト。
楡(にれ)メイ・・・元アイドルで今村さんの綾ちゃんの次の彼女、後に別れる。
北見さん・・・今村さんの知り合いで知的でカッコイイ男性。クリエイター志望だったが、今は大手の会社で人事部。あみ子にアドバイスをくれる。
中崎さん・・・今村さんのライター仲間。あみ子を人脈目当てに近付くミーハーファンと勘違いし、近づくなと忠告してくる。
杏子・・・楡メイの友人で元モデルで現ヨガインストラクター。実は北見さんの彼女。
「まじめな会社員」あらすじ1巻(ネタバレ有り)
憧れの存在「綾ちゃん」
主人公・あみ子は契約社員。仕事の内容はアプリのメールサポート。定型文をコピペするだけの簡単な仕事で、ストレスが無くていい。
彼氏いない歴は5年。マッチングアプリで彼氏を探すけれど、デートでも定型文をコピペするように会話してしまう。
同僚の「小山綾」はお洒落な雰囲気で憧れの存在。ある日落とした本を綾に拾ってもらったことで仲良くなり、「読書会」に誘われる。
読書会で今村と出会う
読書会に行ってみると、あみ子がいつも読んでいる書評の著者・今村直之がいた。座談会で、今村とあみ子だけが意見が一致し、「わかりあえる人がいた!」と、あみ子はうれしくなる。
なんとか今村と繋がりを持ちたいと、今村がバイトする書店に通うようになる。思い切ってご飯を誘うがイマイチ盛り上がらない。
仲良くなった綾と食事。本や音楽、いろいろな世界に詳しい綾をますます魅力的に感じ、「綾ちゃんの彼氏はさぞ素敵だろう」と想像する。
綾に誘われたDJイベントに行くと、そこに今村もいた。今村こそが、綾の彼氏だったのだ。
想太郎に片思いしてた過去
気まずくて帰ろうとしたら、いつも喫茶店で会ってる友人にばったり出くわす。喫茶店仲間の想太郎がDJをするので誘われて来たらしい。自分だけ誘われてないことにショックを受けるあみ子。
「なんでいるの?」と聞かれ、自分は会社の同僚(=綾)に誘われて来たのだと告げるが、友人たちは訝しむ。
あみ子は1年前に想太郎に告白して、フラれていた。そして想太郎はそのことを他の友人に話していた。友人からはあみ子が想太郎をストーキングして勝手にイベントに押し掛けたと思われているようだ。
告白してからみんなから避けられていることを感じているあみ子。
ZINEに誘われ有頂天に
綾から「あみ子ちゃん面白いからZINE(=自主制作の雑誌?)にエッセイ書かない?」と誘われる。憧れの綾から認められたようで、うれしくてたまらない。
お正月。あみ子は東北の実家に帰省する。無神経な両親に辟易しながらも我慢して過ごすが、「独身は惨めだから早く結婚しろ」にブチ切れてそこから一切口を聞かずに東京に帰る。
結婚式の二次会に出席すると、ほとんどの子が結婚していて、独身の子は昇進に悩み、自分はそのどちらにも当てはまらない。
綾、今村さんと別れNYへ
綾から会社を辞めてニューヨークへ行くと聞かされる。今村とは別れたとのこと。
自分と綾とで見ている世界があまりにも違うことを突き付けられ、ショックを受ける。
「まじめな会社員」1巻・感想
友人の中で自分だけ誘われてなくて気まずい思いをするのがあるある過ぎる。
あみ子って実はフットワーク軽くて行動力がある。でもその行動のどれもが空回りしちゃって悲しい。
綾ちゃんみたいな子って憧れるけど、自分が同じことをしても綾ちゃんみたいにはなれないので(周囲の扱いが違うから)、だから憧れるだけ惨めになっちゃうよね…。
でもそこで綾ちゃんに嫉妬を一切しないあみ子って凄い。いや、嫉妬して諦めた方があみ子のためでもあるのかな?
毎年嫌な思いをするってわかってるのに、律儀に実家に帰省するあみ子ってエライ。でもその真面目さが自分を苦しめてるのよね。
「まじめな会社員」あらすじ2巻(ネタバレ有り)
世界にコロナがやってきた
コロナの蔓延で、旅行したり人に会ったりできないことをみんな嘆いている。でも元から自分は旅行も人に誘われることもないから、みんなが自分と同じレベルに落ちてきたと喜ぶ。
綾はニューヨーク行きを中止していた。元同僚の不破と付き合いだしたと聞かされる。お似合いのカップルに「これから先、私は一生誰かにおめでとうを言うだけなんだろうな」と不安を覚える。
想太郎はコロナで喫茶店のバイトが減ったので、喫茶店仲間の伝手でデザイン事務所に就職していた。デザイン事務所のBBQの様子が想太郎のインスタグラムストーリーに上がっているのを見るあみ子。そこには他のメンバーもいる(デザイン事務所の取引先のため)。またも自分だけ呼ばれてない。
コロナ禍で誰とも会えないはずなのに、実はみんな会っている。自分は呼ばれない。3.11の時もひとりぼっちで不安だったことを思い出すあみ子。
今村と再会
映画館でばったり今村に出会い、流れで一緒に食事することに。ZINEに寄稿した文章を褒めてもらい、うれしいあみ子。
帰り道、今村さんの知り合いの女の子・元アイドル「楡(にれ)メイ」と出会う。
一緒に飲もうとメイに誘われたが、「明日仕事あるんで」と断る。すると2人から「ちゃんと会社行ける人、尊敬します」と言われモヤモヤする。
いい子になりたい!
何気なく見た動画で、綾プロデュースのコスメブランドが発売されることを知る。綾の双子の弟がメイク動画が人気で、その縁で話がすすんだらしい。
自分のブランドを持たないかと持ち掛けられる綾、困ってたら仕事を紹介される想太郎、それに比べて自分は誰からも声をかけられない。
それは自分が性格が悪いからだ、まずはみんなに「いい子」と思われよう、と決意するあみ子。
読書会で最悪の気分に
あみ子は今村から誘われ読書会に行く。そこには楡メイもいた。以前の座談会形式と違って身内の飲み会のような会だった。「いつものメンバーだと盛り上がらないから」とあみ子を連れてきたと今村から紹介される。
それを聞いたあみ子は、自分が場を盛り上げなければと勘違い。意見を発表したり、隣の人に熱心に話掛けたりした。
気を利かせて外に日本酒を買いに外に出ると、メンバーの1人である中崎に呼び止められる。
さっきのがんばりが裏目に出て、「ライターになりたくて人脈作りに近付いてるんだろ?これ以上は近付かないでくれる?」と忠告されてしまう。
「まじめな会社員」2巻感想(ネタバレ有り)
ラストが悲しすぎた。一生懸命気をつかって、これが礼儀と思って熱心なフリをしてたのに、「近づくな」だなんて…。
でもそういう「がんばろう!」と思ったタイミングで空回りしちゃうことって、あるよねー。がんばりすぎっていうか、自分だけはしゃいじゃって周りが見えてなかったていうか…。あーん!あみ子辛過ぎるよ~。
「毎日会社行けて凄いですよ」って言われてモヤモヤするのもわかる。こちとら会社行くしか生きる道ねーんだよ!会社行かなくて済む方法教えてくれよ!ってね。
心えぐられる2巻でした。
「まじめな会社員」あらすじ3巻(ネタバレ有り)
北見さんと出会う
不快になって帰ろうと思ったが日本酒だけ渡そうと読書会の部屋に戻る。そこには北見という男性がいた。今村たちの仲間で、元はクリエイターを目指していたが諦め、今は派遣業務をしているという。
これ以上中崎と顔を合わせたくなくてあみ子が帰ろうとすると、同じタイミングで北見も帰ることに。
帰り道の雑談で「経済的自立」が大事ですよね、と北見に言われ印象に残る。北見が以前所属していた演劇のポスターをもらう。
次の日、あんな素敵な男性がいるんだ…と北見のことを思い出し、経済的自立について考える。
ヨガ女子会に参加
楡メイの友人がヨガインストラクターの資格を取ったばかりで教える練習をしたいから参加してくれないかと誘われる。
ヨガ後に感想を話すために女子会が開かれる。ヨガインストラクターの杏子は元モデル。インストラクターの資格は取ったが実家暮らしのほぼ無職。彼氏にプロポーズされることを期待するが、仕事をがんばるよう彼氏に諭される。
話しの流れで楡メイに「あみ子ちゃん彼氏は?」と聞かれる。「この前会った北見さん、カッコイイなって思うけど彼女いるだろうな…」と思っていることを素直に口に出す。なぜか微妙な空気に。
あみ子、副業ライターになる
北見さんのような素敵な男性と釣り合うためには、まずは自分が経済的自立をしなければならない。そしてやりたいことを仕事にしたい。
そう決意し派遣会社にライター希望で登録する。しかし未経験ではライターの仕事を紹介されるはずもなく、事務系の紹介ばかり。
ヨガメンバーでまた女子会。そこで楡メイから今村に浮気され別れたと聞かされる。今村はとんでもない浮気野郎だったのだ。
ヨガメンバーの1人に、「クラウドソーシング」という未経験でもライター経験が積めるサイトがあることを聞かされる。早速クラウドソーシングに登録する。
クラウドソーシングのような副業ライターは、誰にも書けるから単価が安い。それでも書くことは楽しい。
副業ライターで稼いでお金ができたので、北見さん会いたいという下心で貰ったポスターの演劇を見に行く。偶然本当に北見さんがいた。一緒にお茶をし、改めてカッコよさにほれぼれする。
北見さんの彼女は経済的自立してなかった…
ヨガメンバーで女子会。楡メイは今村と復縁していた。
杏子は「大手の会社で人事をやってる彼に比べてほぼ無職な自分に引け目を感じる」と話す。杏子の彼氏は北見だったのだ。
北見の彼女である杏子の前で「北見さんカッコイイ」と発言したこと、ここ数日浮かれていたこと、自分が馬鹿みたいだ。
みんなの前で泣いてしまうあみ子。
北見に釣り合うように経済的自立をしようと思ったのに、北見の彼女は経済的自立をしてなかった現実に気付くあみ子。
やっぱりライターになりたい!
副業ライターのようないい加減な記事を書くことにいい加減うんざりしてきた。
自分は待ってても誰かに声をかけられる人間じゃない。だったらこっちから声をかけるしかない!とあみ子は決意する。今村が関わっているWEBメディアがライターを探していると聞き、早速手を挙げ応募する。
あみ子がライターになりたがっていると知った今村が、以前の読書会のメンバーのいる場所に誘ってくれた。行くのを躊躇ったが彼らに行動を制限されたくないと行くことを決意。しかし到着するとちょうど「地方出身」「アラサー」「今さらライターになりたいって」と自分の陰口を言われているところだった。「コロナなんで帰ります」とすぐに帰る。
今村の関わっているWEBメディアのライターは憎き中崎に決まったらしい。
綾に連絡したら新しい企画があるからと会うことに。そこに楡メイもいた。綾から美容ライターの仕事を紹介してもらえることに。
忘年会で…
綾から紹介されたライターの仕事はやりがいがあって楽しい。アクセス稼ぎのために煽るだけの副業ライターの仕事とは大違い。
綾に内輪の忘年会に誘われ行くことに。みんなに囲まれる綾。自分の周りには誰もいない。
手持無沙汰で誰もいない部屋にいると、楡メイと今村の修羅場に出くわす。今村がまた浮気をしたようだ。
「まじめな会社員」3巻の感想
杏子ちゃんの彼氏が北見さんだって、あのタイミングで誰か教えてやれよー!と思った。あの気まずさと情けなさったらないよね…。
ライターになりたいことを馬鹿にされて、今まで普通の会社員になるしか道がないと思ってて、ようやくやりたいことを仕事にしてもいいんだって気付いて一歩足を踏み出したのに、じゃあどうすりゃいいんだよ!って思うよねぇ。
ライター業でやりがい見つけて幸せ気分と思えば、突き落とされる(北見さんに失恋、ライター陰口、忘年会ぼっち)、ジェットコースターのような3巻でした。
「まじめな会社員」あらすじ4巻(ネタバレ有り)
今村からキスされそうに…
楡メイと今村さんの修羅場の後、今村さんを慰めていると今村さんからキスされそうに…。驚いて声を出すとそのまま無かったことになってしまった。
もしかして幸せ?
信用金庫時代の元同僚に出くわす。「ライターしてるなんて凄い」「転職2回もしてるの凄い」と言われ、「同じところでずっと勤めてる方が凄いよ」と謙遜する。かつて今村に「会社員やってるだけで凄い」と言われ嫌な気持ちになったのに、自分が同じことを言ってしまってることに自己嫌悪。
もしかして今の自分、幸せかも?と思うあみ子。
綾から依頼の次の記事のテーマは「ルッキズム」。日頃から美醜に囚われているあみ子はどうもペンが乗らない。
綾、楡メイと集まって記事を仕上げることとに。お洒落で自分の考えをしっかり持ってる2人と会話していると、「東京に来てよかった!」と心底思える。
その後、実家から電話がある。母親がガンになったと…
帰郷、東京から遠ざかる日々
場面は変わって3年後。実家近所の郵便局でパートをしているあみ子。
母親の病気はたいしたことなかったが、父親がぎっくり腰になり車の送迎が必要になる。そのままズルズル実家暮らしとなることに…。
「家賃がいらないからライター仕事に専念できる」と思いきや、今まで書いていたような「ルッキズム」なんて田舎に暮らしていると別世界のことで、逆に書けなくなってしまった。
食費もかからないからお金が貯まる。服を買っても着ていく場所がないから物欲も無くなった。
今村さんが小説家デビューし、話題になっているのを知る。
お母さんが言ったんじゃん!
あみ子35歳、彼氏いない歴10年になった。
古い友人と会う。その友人は妊娠出産でこっちにいるが、夫の海外留学が終わったら東京に戻って大学院に行くという。
その友人はかつて、あみ子が信用金庫に就職が決まった時に「本当にやりたい仕事なの?」と言った。その時は「そんな甘い考え…」と思ってたあみ子だが、やりたいことを優先した友人が今は正しいと思える。
子どものやりたいことを自由にやらせた友人の親と、就職に有利だからと経済学部しか進学を許さなかった自分の親。
家に帰ると母親があみ子が投稿した川柳が新聞に載ってると教えてくれた。
「あんたも文学部に行ってれば今頃新聞社に勤めてたかもねー」
と笑う母親にあみ子は激怒する。
「お母さんが言ったじゃん!文学部なんて行ったって仕事ないって!」
だから興味ない大学に行ったのに。母親は自分が言ったことを覚えてない。そんな言葉に従った自分。それで結局コレかよ。
思い出の地、東京
ヒロミの結婚式で久しぶりに東京の友人に会う。田舎に戻った自分を、みんなもう別世界の人間と思っているので気後れはしない。
せっかく東京に来たので、懐かしの喫茶店に寄る。ショックなことに潰れて別の店になっていた。想太郎に連絡したいが、どうせなんとも思ってないだろう。自分が東京で過ごしたキラキラとしたあの空間が無かったことになるようで悲しい。
バーで、周囲よりダサくて地方出身らしき若い女の子を見つける。かつての自分に重なる。あの頃もう30歳って思ってたけど、今思えばまだ30歳だった。
今村の小説が映画化され、ラジオにゲスト出演することを知る。ラジオ局に向かう。
「初めて会った時から私のことわかってくれる人だって思いました。付き合ってください!」
「僕のことをわかってくれる人がたくさんいるって(本が売れて)わかったのでもういいです。今は知らないことを経験するのが楽しいです。それじゃ。」
やっぱりフラれる。
自分で選んだ地獄
綾は彼氏を置いて海外へ行く。
あみ子は東京に戻る決意をした。田舎で何ごともなく老けていくのも、東京でお金が無くて野垂れ死ぬのも、どっちにしろ地獄だ。だったら自分で選んだ地獄がいい。
「まじめな会社員」4巻の感想
怒涛の4巻でした。
せっかくライター仕事をゲットできたのに、3年後の郵便局でパートしてるダサいあみ子は夢オチかパラレルワールドなことを期待してた。
でも違った、現実だった。
親の病気は結局たいしたことなかったし。放っておいてもよかったはず。でも結局そこでずるずる田舎に戻ってしまうのが、あみ子なんだよね。
お母さんの発言「文学部に行ってれば…」はブチ切れるよね~。自分がこんなに苦しんでるのに、笑い事じゃないのに。でも親だとしても自分以外の他人が、自分の人生の責任なんて取ってくれないもの。最後の東京行きに繋がってるのはここじゃないかな。
最終的にあみ子は東京に戻ることを決断した。でも幸せになれる保障はない。いや、ほぼ地獄は確定してる(だって35歳で転職ってねぇ…)。
全然ハッピーエンドじゃない終わり方がこの漫画らしくていい。
最終話に綾ちゃんはチラッとしか出なかった。綾ちゃんはあみ子の憧れの女の子としていい面しか描かれなかったけど…。自分のために会社を辞めてくれた優しい彼氏を置いて海外へ。それがカッコイイ生き方なのか、置いていかれる彼氏からしたらどうなのか。
あみ子はこれからも地獄しかないけれど、散々自由に生きてきた綾ちゃんはこれからも幸せのままなのか。意地の悪い私は不幸せになってほしいとまで思ってしまう。